テスト3

松本清張と聞けば、おそらく社会派推理小説家のイメージを持つ方が多数派であろう。しかし、清張はデビューしたての頃はむしろ歴史小説を多くものし、デビュー作も歴史ものであった。私は社会派推理小説家としての清張よりも、歴史小説家としての清張を好んで読んできた。おすすめは『小説日本芸譚』(新潮文庫)である。止利仏師、運慶、雪舟、写楽など日本を代表する芸術家たちの抱えた創作上の苦悩をこれでもかと描ききった短編集で、「自分が作りたい物を自分が作りたいときに作り、そのうえで評価を得続けている創作者」などこの世に存在するはずないのだと、ある意味で勇気をもらえる作品群である。